うつ病とは
うつ病は、気分が強く落ち込む(抑うつ気分)、これまで楽しめていたことが楽しめない(意欲低下)、死にたいと思うことがある(希死念慮)といった心の変化に加え、眠れない、食欲がわかない、疲れやすいなどの体の不調もあらわれ、日常生活に大きな支障をきたす“病気”です。
単なる「気分の落ち込み」や「性格の問題」ではなく、心身のストレスを背景に、脳がうまく機能しなくなっている状態で、治療が必要となる医学的な疾患なのです。
このうつ病は、誰にでも起こりうる身近な病気とされており、日本でも生涯のうちに経験する方は少なくないという報告もあります。
本人の「頑張りが足りない」ということではありませんので、つらい場合は我慢せず、お気軽にご相談ください。
早めに気づいて適切な治療につなげることで、つらい症状からの回復が期待できます。
このような症状がありましたら、うつ病が疑われます
- 一日中気分が沈み、ゆううつな状態が続く
- これまで好きだったことにも興味がわかない
- 何をするにもおっくうで、やる気が出ない
- 疲れやすく、体が重く感じる
- 集中できない、考えがまとまらない
- 決断することが難しくなる
- 自分を責めてしまう
- 将来に希望が持てない
- 不安感や焦りが強くなる
- 眠れない、途中で目が覚める、朝早く目が覚める
- 反対に寝すぎてしまう
- 食欲が落ちる、または食べすぎてしまう
- 頭痛、めまい、胃の不快感や下痢、吐き気、肩こりなど体の不調が続く
- 「消えてしまいたい」「死にたい」と感じることがある
など
うつ病による上記のような症状をそのままにしてしまうと、仕事や家事、学業、人間関係に大きな影響が及び、休職や離職、ひきこもりにつながることがあります。
また、不眠や食欲低下などの身体症状が長引くことで、内科などを受診しても原因がはっきりしないまま、つらさだけが続くこともあります。
さらに、うつ状態は双極性障害、甲状腺の病気、薬の影響、認知症の初期症状など、ほかの病気と見分けが必要な場合もあるため、我慢せずに、早めに専門医へ相談することが大切です。
うつ病の原因
うつ病の原因はひとつではなく、いくつかの要因が重なって発症すると考えられています。
まじめで責任感が強いなど、もともとなりやすい傾向にあることに加えて、仕事や家庭での強いストレス、人間関係の悩み、離婚や死別など喪失体験、環境の変化、過労、睡眠不足、身体の病気などがきっかけになることがあります。
つらい出来事のあとだけでなく、就職、昇進、結婚、出産、引っ越しなど、一見前向きに見える変化のあとに発症することもあります。
うつ病は、これらのことが引き金となって、脳の働きや神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなど)のバランスの乱れることが関係して発症すると考えられており、ご本人の努力不足や気持ちの弱さが原因ではありません。
周囲からはわかりにくくても、心身のエネルギーが大きく低下している状態とも言えます。
うつ病の治療
うつ病の治療は、主に薬物療法と精神療法を中心に行いますが、まず大切なのは、今のつらさを認め、無理を続けないことです。
状態によっては、仕事や家事の負担を調整し、しっかり休養を取ることも治療の一部になります。
自宅では家族との関係などで落ち着かない、という場合は、入院療養を考慮することもあります。
薬物療法では、主に抗うつ薬を用いて、落ち込みや不安、不眠などの症状をやわらげていきます。
抗うつ薬は、セロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質が有効に機能するようサポートするものです。
- SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
- SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
- NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)
などが代表的です。
このほか必要に応じて、漢方薬、睡眠薬、抗不安薬などを併用することもあります。
抗うつ薬は飲んですぐに効くものではなく、効果があらわれるまでにある程度時間がかかることが多いため、焦らず続けることが大切です。
精神療法では、診察の中で現在のつらさや背景を丁寧にうかがい、症状との付き合い方、考え方の整理、生活リズムの整え方、再発予防の工夫などを、患者さまと一緒に考えていきます。
必要に応じて、認知行動療法的な視点を取り入れながら、物事の受け止め方の偏りや、自分を追い込みやすい考え方を少しずつ見直していくこともあります。
薬だけに頼るのではなく、患者さまお一人おひとりの状態に合わせて治療を組み合わせていくことが、回復への近道になります。
抑うつ状態とは
抑うつ状態とは、気分の落ち込み、意欲の低下、不安、疲れやすさ、不眠など、うつ病でみられるような症状があらわれている状態を指します。
ただし、抑うつ状態という言葉は、症状のまとまりを表す言葉であり、それ自体が必ずしも「うつ病」とイコールではありません。
抑うつ状態は、強い精神的ストレス、長時間労働、睡眠不足、人間関係の負担、環境の変化、身体疾患、ホルモンバランスの変化、喪失体験などをきっかけに起こりやすくなります。
日々の負担が積み重なることで、心と体のエネルギーが消耗し、気分や意欲の低下としてあらわれることがあります。
このほか、適応障害、双極性障害、身体の病気、薬の影響などでも抑うつ状態は起こります。
同じ抑うつ状態でも、原因によって治療は異なるため、正確な見極めが大切です。
抑うつ状態になりやすい人
抑うつ状態になりやすい人としては、まず責任感が強く、まじめで頑張りすぎてしまう方が挙げられます。
周囲に気を配り、自分のつらさを後回しにしやすいため、限界まで無理を重ねてしまうことがあります。
次に、完璧にこなそうとしやすい方も注意が必要です。
少しの失敗でも自分を強く責めやすく、心の負担が大きくなりやすい傾向があります。
また、環境の変化に敏感な方も、就職、異動、結婚、出産、介護、子育てなどの節目に心身のバランスを崩すことがあります。
周囲からは順調に見える出来事でも、本人にとっては大きな負荷になることがあります。
さらに、睡眠不足が続いている方、身体の病気を抱えている方、もともと不安を感じやすい方などは、抑うつ状態をきたしやすいことがあります。
こうした背景がある場合には、早めに気づいてケアを始めることが大切です。
抑うつ状態でみられる症状
- 気分が沈む
- 何となく楽しくない
- やる気が出ない
- 疲れやすい
- 集中できない
- 不安が強い
- イライラしやすい
- 自信が持てない
- 自分を責めてしまう
- 眠れない、または寝すぎる
- 食欲が落ちる、または増える
- 頭痛、めまい、動悸、胃の不快感などの体調不良が続く
など
抑うつ状態だと感じたら
「最近ずっと気分が晴れない」「前のように頑張れない」「休んでも回復しない」と感じるときは、どうか無理を続けすぎないでください。
抑うつ状態は、頑張りが足りないから起こるのではなく、心と体が疲れ切っているサインかもしれません。
つらさを抱えたまま我慢していると、症状が長引いたり、日常生活に大きく影響したりすることがあります。
早めに相談することで、症状の背景を整理し、適切な対処につなげることができます。
当クリニックでは、まず現在の症状や生活状況、背景にあるストレス、身体の状態などを丁寧にうかがい、抑うつ状態の原因を見極めます。
そのうえで、必要に応じて休養の取り方や生活リズムの整え方をご提案し、症状に応じてお薬による治療や精神療法を行います。
お薬が必要な場合も、患者さまのお気持ちや生活への影響に配慮しながら、無理のない形で一緒に治療方針を考えていきます。
一人で抱え込まず、「少しつらい」「このままで大丈夫か不安」と感じた段階でも、お気軽にご相談ください。