統合失調症とは
統合失調症とは、考えや気持ち、ものの受け取り方がまとまりにくくなり、現実との距離感がうまく保てなくなることがある疾患です。
代表的な症状として、幻覚や妄想などが知られていますが、それだけではなく、意欲の低下や感情表現の乏しさ、集中しにくさなど、さまざまな症状があらわれます。
そのために行動や気分、人間関係などにも影響が出てしまう場合もあります。
統合失調症は決して珍しい病気ではなく「100人に1人くらいがかかる」という報告もあります。
発症は思春期後半から青年期、成人早期にみられることが多く、進学、就職、結婚など人生の節目と重なる年代に起こることも少なくありません。
早めに気づいて適切な治療を始めることで、症状が重くなりにくく、長期的な回復につながりやすいとされています。
統合失調症の原因
統合失調症の原因は、まだひとつに特定されているわけではありません。
現在は、遺伝的な要因に加えて、脳の働きの偏り、発達の過程、ストレス、環境の変化など、いくつかの要因が重なって発症すると考えられています。
仕組みとしては、脳のさまざまな働きをまとめたり、必要な情報と不要な情報を整理したりする神経伝達機能がうまく働きにくくなることで、幻覚や妄想、考えのまとまりにくさなどが起こると言われています。
発症のきっかけとしては、進学、就職、転居、人間関係の変化、睡眠不足、強いストレスなどが重なることがあります。
ただし、こうした出来事だけで起こるわけではなく、もともとのなりやすさがあるところに負担が加わって症状が出てくると考えられます。
統合失調症では、
以下のような症状がみられることがあります
陽性症状
陽性症状とは、健康なときにはなかった症状があらわれる状態です。
代表的なのは幻覚と妄想です。
幻覚の中でも多いのは幻聴で、たとえば「悪口を言われている」「監視されている」など、実際にはない声が聞こえるように感じることがあります。
妄想としては、「誰かに狙われている」「周囲が自分を陥れようとしている」「テレビやインターネットが自分に向けて特別なメッセージを送っている」といった確信が生じることがあります。
ほかにも、考えがまとまらず話が飛びやすい、会話がかみ合いにくい、行動が混乱する、といった症状もみられます。
陰性症状
陰性症状とは、これまであった意欲や感情表現、社会性などが乏しくなる状態です。
たとえば、表情が乏しくなる、声の抑揚が少なくなる、人と関わることを避けるようになる、何事にも興味が持てない、身の回りのことをする気力が出ない、といった変化がみられます。
周囲からは「怠けているように見える」「元気がないだけに見える」こともありますが、病気の症状として起こっていることがあります。
認知機能障害
統合失調症では、認知機能の低下がみられることもあります。
これは、集中しにくい、物事を整理して考えにくい、段取りを立てにくい、記憶しづらい、会話の流れを追いにくいといった症状です。
仕事や家事、学業の場面では、「前のようにうまくできない」「簡単なことでも負担に感じる」といったかたちで困りごとが出てくることがあります。
こうした症状は外から見えにくい一方で、生活機能に大きく影響することがあります。
統合失調症の経過
統合失調症は、一般に前兆期・急性期・休息期・回復期という流れで経過すると考えられています。
前兆期は、はっきりした幻覚や妄想が出る前の、前触れともいうべき段階で、眠れない、不安が強い、イライラしやすい、人づきあいを避ける、集中しにくいといった変化が少しずつみられます。
続く急性期では、幻聴や妄想、考えのまとまりにくさ、興奮などの症状が目立ち、日常生活に大きな支障が出ることがあります。
薬によって症状を抑えることが必要になる場合もあります。
その後、症状が落ち着き始めると休息期に入ります。
この時期は、急性期で消耗した心と体を休める段階で、強い眠気、だるさ、意欲の低下、引きこもりがちになる様子がみられることがあります。
休息期は数週間から数か月の期間経過をたどります。
さらに回復期になると、周囲への関心や活動性が少しずつ戻り、生活リズムを整えながら社会生活へ近づいていきます。
ただし、回復の速さや症状の出方には個人差があり、よくなったり悪くなったりを繰り返すこともあるため、継続的な治療と再発予防が大切です。
統合失調症の診断
統合失調症の診断では、現在みられている症状の内容と経過を丁寧に確認していきます。
幻覚や妄想、考えのまとまりにくさといった症状の有無や、意欲低下、感情表現の変化、生活への影響などを総合的にみて判断します。
さらに日常生活や社会生活において支障をきたしているかどうかも重要な判断材料とされます。
また、似た症状を示すほかの病気との見分けもとても重要です。
たとえば、双極性障害、うつ病、薬物やアルコールの影響、発達特性、てんかん、認知症、甲状腺疾患、脳腫瘍や自己免疫性脳炎などでも、似た精神症状が出ることがあります。
そのため、心療内科・精神科での診察に加え、必要に応じて血液検査、甲状腺機能検査、画像検査などを検討し、身体の病気が隠れていないかも確認します。
統合失調症の治療
当院では、統合失調症に対して、薬物治療を中心に、必要に応じて心理社会的治療を組み合わせながら支援していきます。
統合失調症では、症状を落ち着かせることだけでなく、再発を防ぎ、その方らしい生活を取り戻していくことが治療の大切な目標になります。
薬物治療の中心となるのは抗精神病薬です。
現在、主に使用されている抗精神病薬には、非定型抗精神病薬(第二世代)のリスペリドン、オランザピン、クエチアピンや、新しい第三世代の抗精神病薬であるアリピプラゾール、ブレクスピプラゾールなど、以前のものより副作用を抑えた、さまざまな種類があります。
これらは主に幻覚や妄想、興奮などの陽性症状を和らげ、再発予防にも役立ちます。
お薬によって、眠気、体重増加、便秘、ふるえ、月経への影響など副作用の出方が異なるため、患者さまの症状や生活スタイル、副作用の出やすさをみながら調整していきます。
内服薬の継続が難しい場合や、飲み忘れによる再発が心配な場合には、効果が長持ちする持効性注射剤(LAI)を検討することもあります。
これは数週間ごとに注射で投与するタイプの抗精神病薬で、服薬管理の負担を減らしながら治療を続けやすくする方法です。
統合失調症では、症状が落ち着いたあとも再発予防のために治療を継続することが重要とされています。
心理社会的治療としては、病気について理解を深める心理教育、生活リズムやストレス対処を整える支援精神療法、リハビリテーション、社会生活技能訓練、就労支援、訪問看護や地域支援との連携などがあります。
さらにご家族への支援、心理教育やトレーニングも統合失調症治療では重要になります。
当クリニックでは、患者さまご本人のつらさだけでなく、ご家族の不安や困りごとにも目を向けながら治療を進めてまいります。
気になる変化があるときは、ご遠慮なくご相談ください。